観光客と地元住民が共存できる社会

訪日外国人は年々増加し、2018年には3000万人を超えた。その原因は、世界的な経済発展で裕福な人々が増えていることである。この人々が、余暇を楽しむために海外に旅行する。別の理由としては、LCCの台頭により旅行費用が安価になっていることも挙げられる。

訪日外国人の増加により経済の再生が期待できる。一方で地元では次のような問題も起きている。

●問題1:民泊目的の不動産投機による家賃・地価の高騰
家賃・地価が高騰すれば、地元民は出ていくしかない。

●問題2:混雑
訪日外国人が増えても、土地が広がるわけではない。結果として、混雑が悪化してしまう。例えば京都の嵐山で有名な竹林(次の画像参照)は、混雑によって、ゆっくり楽しめない場所になっている。

●問題3:街並みが変化
お金儲けのために、伝統的な町家を壊してビジネスホテルを建設する流れがある。このため、地元が観光客のための街になっている。

●問題4:ゼロドルツーリズム
訪日外国人の国籍で最も多いのは中国である。昨今の旅行客は、中国系のホテルに泊まり、 中国系のガイドを雇い、支払いを中国系の電子マネーで行うことがある。このため、観光客が支払ったお金が全て日本人に渡っているわけではない。その反面で、地元の自治体は、トイレ、駐車場、ゴミ箱を整備する必要があり、コストを負担している。

以上のような問題点が指摘される。これは、世界中の観光地で起きていることである。全ての問題を一度に解決することは難しいが、少しでも緩和するために次のような対処が考えられる。

●対処1:行政がコントロールする
例えばヨーロッパの観光地では、旧市街に宿泊施設を認めないことや、大型クルーズ船の寄港は郊外に限定すること、そして、商店街の入れ替えは委員会が決めること、といった対策を行っている。更に、オランダ政府は、観光促進に予算を立てないことを決めた。予算を立てなくても観光客は来るからだ。

●対処2:観光客から料金を直接徴収する
例えば富士山の入山料は1000円である。現状では徴収を徹底できていないようだが、2019年の夏から強化する。このようにすれば混雑は多少緩和できる。そして入山料を使えば、山道や山小屋の整備や、富士山の清掃が可能である。富裕層優遇とならないように、学生割や事前予約割引の制度の導入も必要かも知れない。

●対処3:空き家を利用する
日本の人口減少に伴い、空き家が増加している。現状、7軒に1軒は空き家である。空き家が増加すれば、放火の危険や、浮浪者が住み着く危険等が高まる。このため、自治体は頭を悩ませている。そこで、空き家を観光施設や飲食店等に利用してもらうことで、他の伝統的な町家が取り壊されることを減らすことができる。

以上が対処策であるが、他にも数々の対処策が考えられる。観光客の誘致も必要であるが、地元住民の生活を守ることも重要である。それらを両立できるようにすることが行政の役割である。観光客と地元住民の対立を避けながら、観光立国を実現してもらいたいものである。

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