宿泊業では人手不足や収益性の低下が問題となっており、原因として生産性の低さが指摘されています。宿泊業が生産性を向上させるためには、DXやITを活用することが効果的です。以下、具体的な事例を紹介します。
目次
1.セルフチェックイン/アウト、予約管理システム

・セルフチェックイン、セルフチェックアウト端末の導入
→フロント業務の省力化、フロントの行列ゼロ、人件費削減(参考:アパホテルの「1秒チェックイン」、「1秒チェックアウト」)
・チェックイン・チェックアウトに困ったお客様用にカメラとマイクを設置し、遠隔のスタッフと連絡を取れるようにする
・スマートロック(スマホキー)や顔認証システム
→ 鍵の受け渡し不要、スタッフの対応削減
・チェックアウト時に客室のQRコード等でスマホ操作により精算できる仕組み、あるいは、フロントに自動精算機を設置
・クレジット決済で支払いを非接触完結
・管理システムの活用
→予約管理・顧客管理(参考:陣屋コネクト)
2.清掃スケジュール最適化、清掃ロボット、リネン自動発注

・清掃スケジュールを最適化するAIを導入し、清掃スタッフのスマホに次の清掃箇所(大浴場、客室等)の指示を通知するようにする
・人感センサーを大浴場の入口に設置し、大浴場利用者の合計が一定以上になると清掃スタッフに清掃を促す通知を送るようにする
・チェックアウトの時間帯に人感センサーでお客様の在室の有無を把握することで、まだお客様がいる部屋にスタッフが行く無駄をゼロに
・清掃ロボットの活用
・リネン類、歯ブラシ、紙コップ等の在庫状況を自動で把握し、足りなくなったら自動発注する
3.人材活用:マルチタスク化、フレックスタイム等

・一人のスタッフが複数業務(例:フロント+清掃)を担当できるように教育(マルチタスク化)
→シフト調整が柔軟に、少人数で対応可能
・特定技能・技能実習制度やインターンなどを活用
→観光需要に対応できる体制づくり
・フレックスタイム・ワークシェアリングの導入、教育・研修制度の充実
→離職防止、モチベーション向上、キャリア形成支援
4.収益性の向上:ダイナミックプライシング、サブスク等

・曜日、天気、イベント情報、他施設の価格、その他の状況に応じて宿泊料金を自動調整するダイナミックプライシングを導入
→稼働率が低くても収益を最大化
・テレワーク、ワーケーション、留学生などを対象としたサブスクリプションや中長期滞在プランの展開
→客室の「空き」を減らす工夫
・地域や地元の食材の活用や、地元アクティビティ付きプランの販売による付加価値向上
→単価アップ+差別化による集客強化
5.データ活用によるサービス改善、競合分析
・顧客属性・顧客行動データを活用したサービス改善
・レビュー・口コミの分析による問題点の早期発見
・競合分析ツール(例:競合ホテルの価格・稼働率)の導入
6.業態転換・多角化の模索
・省人型ホテル(無人・簡易宿所)や、サテライト型・多拠点運営(本部一括管理)への業態転換
・カフェ運営、地域ツアーなどへ多角化し、付加価値提供
7.AIチャットボットで24時間おもてなし

・「近くのレストランを教えて」「電車の発車時刻を教えて」などの問い合わせにAIチャットボットが対応し、AIが答えられない質問にスタッフが答える(「人×AI」のベストミックス)
→スタッフの対応時間を削減しつつ海外客等の満足度も向上
8.人感センサーにより混雑状況を見える化

・大浴場、フロント、レストラン、マッサージルーム等に人感センサーを設置して混雑状況を測定し、お客様のスマホや館内のデジタル看板で誰でも見られるように見える化する
9.IT導入補助金の活用も一案
・高額なDX/IT導入費用をまかなうために、政府によるIT導入補助金を活用
まとめ:「人手不足」はチャンス!
宿泊業の生産性向上=「少ない人数・資源で、より多くの価値を生み出す」ことです。
日常業務が忙しく生産性向上に取り組む時間が取れない場合もあると思います。
しかし長い目で見れば、生産性向上は日常業務や宿泊施設経営を楽にしてくれます。そのためには以上のような戦略がカギとなると考えます。