三井住友海上は2019年に、日本観光通訳協会会員向けの「全国通訳案内士賠償責任保険」の販売を開始した。その背景には、訪日外国人が増加し2018年に3000万人を突破したことにより、全国通訳案内士が担う業務が増えていることが挙げられる。通訳案内士が抱えるリスクには様々なものがある。例えば次の通り。
・通訳案内業務・食品情報を誤って伝え、それを食べた外国人旅行者がアレルギーを発症した。
・横断歩道でない部分を先導・案内し、外国人旅行者が車両と接触した。
・旅程管理業務・スケジュール管理を誤り航空機に乗り遅れ、追加宿泊・発券費用が発生した。
・道を間違え、演劇の時間に間に合わず返金を求められた。
・受託物の管理・旅行会社から預かったファンド(準備金)や団体乗車券を紛失した。
・外国人旅行者より預かったカバンを紛失し、中に入っていた金銭が無くなった。
以上の他にも多くのリスクが存在するだろう。
旅行では多額の金銭が動くため、生じる損失も大きくなる。また、母国語ではない言葉で会話をするため、案内士が観光客に情報を十分に伝えられなかったり、誤った情報を伝えてしまうこともある。
しかし、上記の保険によって、以上のようなリスクを低減することができる。通訳案内士が一度の些細なミスによって多額の賠償金を負ってしまい、その後の事業が継続できないというのは、観光立国を掲げる日本にとって損失であろう。そのため、この保険の存在は有意義である。
以上のように、観光立国を支える基盤は、少しずつではあるが整えられつつある。2020年に4000万人以上の訪日外国人を受け入れるという政府目標の達成も近いかもしれない。
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