訪日外国人の数は年々増加し、2019年も3,000万人を超えそうである。政府は2020年に4,000万人以上の訪日外国人を受け入れる目標を立てた。
そのような増加に伴い宿泊施設が増えているかというと、そうではない。次の画像に示すように、宿泊施設の数は2009年に84,000軒であったものの、2018年には82,000軒まで減少した。
その内訳には特徴がある。次の画像に示すように、ホテル(ビジネスホテル・シティホテル)が急増しており、旅館は急減しているのである。
上記の通りホテルは急増しているものの、次の画像の通り、ホテルの稼働率は大幅に上昇している。
つまり需要も伸びているため、供給過剰というわけではないのだ。このため、訪日外国人が泊まる施設は旅館からホテルへとシフトしている。
ホテルは旅館に比べて料金が低いことが多い。そのため、旅行費用を抑えたい訪日外国人にとっては良い施設ではあるものの、その分、日本らしさは薄れるだろう。次の画像内の一番左の棒グラフに示すように、日本旅館に泊まりたいというニーズはあるにもかかわらず、それは叶っていないのだ。
ニーズはあるものの、現実は追いついていない。そのため、訪日外国人の満足度を向上させて再度訪日してもらうには改善が必要であろう。
菅義偉官房長官は2019年12月7日、訪日外国人客の受け入れ態勢を強化するため、高級ホテルの建設を後押しする考えを示した。「各地に世界レベルのホテルを50カ所程度、新設することをめざす」と述べた。上記の画像内の左から2番目の棒グラフにも示すように、西洋式の高級ホテルに泊まりたいというニーズはほぼ満たされている。このため、菅官房長官の言う「高級ホテル」が西洋式のものを指すのであれば、方向性は誤っているだろう。訪日外国人の満足度の向上のために、政府には引き続き、業界の支援をお願いしたいものである。
この記事へのコメントはありません。