[現役のビジネスホテル運営者に聴いた]ホテルを全館休業に/「スタッフ達が自主退職を」

新型コロナウイルスが私達の生活を変えている。そこで当社は、コロナ禍で宿泊、航空、観光などの業界に携わる個人にスポットを当て、インタビュー特集を実施している。今回は、ホテルを運営する会社に現役で勤める女性に話を伺った。

[回答者]
二条(30代後半女性)

[職歴]
2008年~2016年 外資系ホテル勤務
2016年~2018年 京町家宿泊施設勤務
2018年~現在 京都ビジネスホテル運営会社勤務

[運営対象ホテルの所在地]
京都府京都市(下京区、中京区等)

[運営対象ホテルの種別]
ビジネスホテル

──コロナ前の業務内容を教えて下さい

インバウンドのお客様が多くご滞在され、大変賑わっておりました。弊社のスタッフが国際色豊かなこともあり、海外からのゲストが稼働の大半を占めているような状況でした。特に、中国、マレーシアといったアジア圏の方やスペインなどのヨーロッパ圏からのゲストが多かった印象です。

紅葉や桜のシーズンには日本のお客様も多くご滞在されておりました。また、ビジネスでご宿泊される日本国内のお客様はもちろん、長期でご滞在される海外からのビジネスゲストの方々にもご利用いただいておりました。

──コロナ禍での業務内容の変化、客層(国籍、性別、年齢)の変化、地域の変化、出勤頻度の変化、ご自身のライフスタイルの変化等を教えて下さい

日本国内で緊急事態宣言が出る以前、武漢から新型コロナウイルスが広まり始めた頃から、海外のお客様が激減しました。毎日キャンセルの問い合わせが殺到するような状況が1か月以上続き、対応に追われました。このため、残業時間数が異常な程多くなりました。その頃は日本国内の方がまだ動いていらっしゃいましたが、それも緊急事態宣言の発令直前には減少し、ホテルは閑古鳥が鳴くような状況になりました。

稼働が一気に下がった当初は、まだ社員もアルバイトも全員出勤をし、キャンセル対応を行いながら、通常行き届くことが難しい場所の清掃や、ホテルのメンテナンスなどを行っておりました。

緊急事態宣言が出てすぐ、アルバイトスタッフ全員を休業とし、社員のみですべての対応を行う形となりました。そのうち、かろうじて5%代をキープしていたホテルの稼働も1%となってしまうような状況となり、人件費や光熱費を考えるとホテルを休業せざるを得なくなりました。ご宿泊をまだキャンセルされていらっしゃらなかったお客様に事情を説明して、ホテルを全館休業とする形になりました。

5月末には、社員の大半も休業を強いられることとなりました。幸い、政府からの補助があり、給与に関しての心配はありませんでしたが、それから年内にわたって全休業のスタッフが多くを占めました。休業が続くことでスタッフ達が自主退職をしていっている状況です。

私自身も、会社のメールチェックや状況などは逐一確認をしておりますが、いまだに完全休業期間になっております。幸い京都ということもあり、現状の観光客が今後も来てくださる見込みとなれば業務再開を見込めます。しかし京都のホテル客室数全体に比べてやはり来訪者は少なく、目途は立っていません。

──給与・賞与への影響を教えて下さい

現状、政府からの補助金で全額給与はいただいておりますが、今後の賞与は見込めません。来年から休業補償がなくなるので、全社員出勤という形になるのか、給与カットでの休業延長となるのか、解雇という状況になるのか、まだ読めていない段階です。

──今後の転職予定の有無を教えて下さい

できれば転職はせずに勤務を続けたいとは思いますが、今後の状況次第では、在宅勤務が可能な職種への転職を視野に入れております。

──ご自身の現状や将来についての所感を教えて下さい

将来に関して不安は非常に大きいです。幸い結婚しておりますので、夫婦の給与で生活はしていけるであろうとは思います。ただ、コロナが始まる前は妊娠し、子供を育て、といった将来設計をしておりましたが、それは一転しております。

──どうもありがとうございました

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